Weightlifting ウエイトリフティング

バーベル速度を知ると革命が起きる? | ウエイトリフティング

投稿日:2020年4月3日 更新日:

ウエイトリフティング 用のバーベル軌道表示アプリでは、バーベル速度も表示できるものがあります。速度を知って何になるの?と思う方も多いでしょう。自分の感覚が全てというタイプの選手にはプラスにならないかもしれませんが、理論的に詰めていくのが好きな選手には良いツールになるかもしれません。

Barbell Tracker GT (旧 WeightLifting Motion): 保存動画にバーベル軌道をつけるアプリ
iPhone
Android
Mac

WeightLifting Motion Camera: 動画カメラ映像にリアルタイムでバーベル起動をつけるアプリ
iPhone

バーベル速度とは?

ここで言うバーベル速度とは、挙上動作中のバーベル中心の垂直方向の最大速度を意味します。挙上中のバーベル最大速度はバーベルの最高点に比例すると考えられます。つまり、バーベル速度が大きい程バーベルは高く上がり、余裕を持ってキャッチする事ができると言えます。

速い方が良い、と言うわけではない

ではバーベル速度を知る事ができたとして、その値をどのようにしてウエイトリフティング パフォーマンスの向上へ結び付けていくかを考えてみます。
まず、バーベル速度は速い方が良いのか?という疑問が生じると思います。これは目的によって異なってきます。以降、種目をスナッチに限定して話を進めます。基本的には他の種目でも同様の考察をできると思われます。
プル練習の場合はバーベル速度が速い方が良いです。先述の通り、速度はバーベルの最高点に比例すると考えられるので、より高く引けた方が良いからです。
では本番のスナッチ競技ではどうでしょうか?この場合は「速い方が良い」というわけではなくなってきます。もちろん速い方がより高く引けて、より余裕を持ってキャッチする事ができます。しかし競技は速度ではなく「重量」を競うものです。必要以上に余裕を持って成功する必要はありません。これは手加減して引けという意味ではなく、

「試技成功に必要以上のバーベル速度がでているならば、より重い重量に挑戦すべき」

という事です。

プル練習でバーベル速度を測り、成功の判断材料とする

では実際の練習にどう使用していくかについて述べます。スナッチで自己記録更新を達成する事を目的とします。
まず、自分の自己記録に近い重量でスナッチを行いバーベル速度を測り、その速度を覚えておきましょう。これがスナッチ成功に必要なバーベル速度の目安になります。私の場合は2.0[m/s]がでていればほぼ成功します。ちなみに私の競技レベルは自体重より少し重い重量でスナッチができる程度です。また、後述しますが競技レベルが上がるほど遅い速度でも成功できるようになります。さらに体重階級が下がるほど小柄な選手が多く、バーベル最高点が比較的低くてもキャッチできるため、遅い速度で成功できる事が分かっています。

次に自己記録より重い重量でスナッチプルを行いバーベル速度を測ります。この時、もしも成功目安の速度以上の値がでていれば、この重量でのスナッチ成功の確率はかなり高いと考えられます。もちろんスナッチ成功にはバーベル高さ意外にも様々な因子が絡んできます。例えば

・速度がでていても軌道が前に膨らんでいてはキャッチできない。
・キャッチ時に肘のロックが甘ければプレスアウトもしくは潰れる。
・キャッチできても安定する前に強引に立ち上がればバーベルを落下してしまう。

などがあるでしょう。
しかし、バーベル速度が十分にでている事がわかれば

「パワーは十分。あとはフォームに気をつければ良いだけ」

と考える事ができます。自己記録に挑む上でこれほど心強い事はありません。

一方、成功目安の速度に達していなければ、私はスナッチに挑まないようにしています。十分に高く引けていない高重量に挑む事は大変危険を伴います。怪我のリスクを回避する判断材料にもなると思います。

世界選手権レベル選手のスナッチは「1.7m/s」

さらにバーベル速度を知ると自分の競技レベルを知る事ができます。
大変有益な情報が以下の論文に述べられています。

Japanese Journal of Elite Sports Support (JJESS)
池田祐介 著
「スナッチ種目における日本人男子選手のバーベルのキネマティクス分析」

一部、抜粋させてもらうと

「鉛直方向の最大速度に関しては,アジア一流選手 の各階級の平均値が 1.86m/s であり 8),世界選手権 に出場した上位選手の値が,60kg 級;1.65±0.08m/s, 75kg 級;1.74±0.06m/s,90kg 級;1.86±0.09m/s,110kg +級;1.80±0.12m/s であったことが報告 1)されている.」

私は世界レベルの選手の試技や練習を生でみた事がありませんが、上記の情報だけで十分その凄さを実感できます。私の身長に見合う階級のデータは75kg級あたりと思われますが、バーベル速度が「1.74m/s」とあります。この値でキャッチする事は私には絶対不可能です。これらの情報から、世界レベルの選手は

・とんでもないスピードでバーベルの下へ潜り
・ありえないほど低い位置でバーベルをキャッチしている

事が予想されます。
合わせて、同じ人間とは思えないほどのパワーを持っているので、私の自己記録の2倍以上の重量を挙げられるのでしょう。

目標とする選手の映像が手に入るならば(合法的に)、バーベル速度を調べてみると大変参考になると思います。自分がパワー(重量 x バーベル速度)で大きく劣っているのか?それとも技術面(潜り動作、キャッチ姿勢)で劣っているのかを判断できると思います。


以上、バーベル速度を知っておくと少し特をする、というお話でした。

-Weightlifting, ウエイトリフティング

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

バーベル軌道表示のための動画の撮り方(その1)

目次 バーベル軌道表示アプリ: Barbell Tracker GT (WeightLifting Motion)バーベル軌道表示の大まかな原理を理解しておく軌道の表示に失敗しやすい動画とは?撮影時、 …

バーベル軌道動画の失敗例

これまでは成功例ばかり公開していましたが・おかしい、そんな風にはできない・宣伝用に加工したものだという声もあるので失敗例も示したいと思います。合わせて失敗原因と対処法も説明する事で皆様のご参考になれば …

バーベル軌道動画の例

この記事では様々な種目のバーベル軌道動画の例を示します。種目によって動画の撮り方が多少異なるので参考にして頂ければと思います。基本的な撮影方法については別記事 バーベル軌道表示のための動画の撮り方(そ …

Examples of barbell path videos

This article gives examples of barbell path videos of various trainings. Please note that the video …

Checking barbell speed will make you better lifter? | Weightlifting

Do you know that some barbell tracking Apps also show bar speed. Sometimes it is important for lifte …

スポンサーリンク